女學生日記 三
TAT


四月十日 月曜
天氣 晴
起床 六時二七分
就床 十時二九分

「今日學校へ行けるかしら」と心配してゐたが朝起きて見たら気持が好かつたので嬉しかつた
お二階で時間割を定めて復習をしてゐると「猿が来た〳〵」とさわいでゐるらしいので見に居つたら 道の前に出て来て 落花生をぽり〳〵と とても上手に食べてゐました
食べてしまうと首をちよつとかたげて兩手をくみ合せてゐました
妹がピーナッツを投げてやつたら 中の豆だけ食べて外の皮をほかつて食べませんでしたので皆が「ぜいたくだなあ」と言つて笑ひました
此の猿は不動公園の猿で四~五日前に逃げたのださうです
警察の方も「捕まへて下さい」と言つてみえるさうですから 小父さんが大きな綱を持つて来てつかまへやうとなさつたが ちよい〳〵と後を向くので とう〳〵つかまりませんでした
今度は屋根へ上がつて往来を眺めてゐました
又 屋根から山へ逃げるのでせう
私は早く捕まればよいと思ひます
お晝休みに級長・副級長・及び各部員の選擧がありました
オルガンを習つてかへりました





散文(批評随筆小説等) 女學生日記 三 Copyright TAT 2022-04-10 20:54:51
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