All I Need
ひだかたけし
深く落ちていく
独りのたましいが棲む処へ
切迫する恐怖に立ち向かい
遥かな声の木霊に安堵して
どよめくその先を目指していく
わたしはもうなにもいらなかった
貴女の在り処さえ確かめられれば
わたしはもうなにもいらなかった
花は咲いた先から舞い散り
次から次にはらはらと逝く
そうして新たな循環に導かれ
世界は新緑の香に充ちていく
深く落ちていく魂の帰属先は
季節の移り変わりとは無関係に
今宵こそはと願う強い意志が
普段の平静を貫くとき見出される
春の驟雨の去った水平線の向こうに
壮大な虹がかかる
裸のまま駆けていこう
先送りされた死が
追いかけてくるその前に