ユース
末下りょう


ゴミ収集車が走り去るにおいを青空に運び去る春風 ボウ 遠のく作業員たちの掛け声
電線の雀たちが放つビーム
桜が咲いたね
ハロー ユース

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遊びたりない わけない
風に育てられた髪が揺れる
亀が泳ぐ二級河川のせせらぎと商店街のサウンドトラックス
一歩一歩が地雷原で一言一言が空砲の子どもたちと戯れ

毛虫に群がる蟻を払い除けても払い除けてもしかたがないことをしった日の
薄いピンクの泡にこもる熱が飛びちっても
何事もなかったように流れていくアスファルトは町の雑音を吸い込み青空の底に吹かれていく
ハロー ユース

失敗だけが出会った理由を更新しつづけて
ハロー

それぞれの想いを胸にジャックしたコンクリートサーフ
破れたヘッドフォンから身体にひろがる波形が解き放ったオーリー
表現が表現したいものを超えてすがたを垣間見せるストーリー
腹ペコのみんなをおかしくさせた爛漫な女の子たちのサラウンド
めいっぱい地面を蹴ったヴァンズクラシックときみのステファンジャノスキー
ぎゅっと固めて跳ね上げたカーフに集結する血液
ラッシュする改札から吹きつける風をきって駆けだした
ハロー ユース

暗くスリッピーな路地裏のクラッシュに宿った意思と粒子
神社のシャイニング落ち葉と木漏れ日の斜光の煌めき
わずかにもたらされた 気がした恩寵と霊気
ガレージにつながれた犬が吠える
素っ気なく閉めきられるカーテンレールの火花
通れるか通れないか通らなきゃわからないルートに押し込んだ身体
削れるアウトソールとハードウィールの低音火傷
フラットから速やかに連帯して鈍色のインセプションに霧散するパピヨンは夢際に誘われて群舞した

鳩だらけのガード下で交わした握手
気が狂うくらいきみと話したくてたまらなかった毎日
ほんとうのきみに会いたかった毎日
靴紐を結びなおしてダウンヒルから滑りこみトレインを追いかけた景色
スウィッチスタンス
すべてをまちがえていたかもしれないぼくの膝を温めたアスファルト
ひとひらの雲もない晴天にきみを乗せて遠ざかる車両

ハロー ユース


グッバイ


ルース


自由詩 ユース Copyright 末下りょう 2022-03-30 17:26:48
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