山林にて '18/05
山人



蒸す日だった
私たちは山林の中の枯葉の上で
一服をしている
同僚の、ほぼ禿げた頭部が汗に光り
涼風が渡っていく

目の前の葉では
太さ一ミリに満たない、尺取虫が
長い首を伸ばし
次に着地する場所を
鼻をふくらませて嗅いでいる
途中の足をカットされたその妙な生き物は
前足にたどり着き安堵するとともに
また同じことを繰り返す

葉の端では
一匹の蜘蛛がそそくさと動き回り
それとともに小さな尺取虫は
葉の裏側へすっと隠れた

あたりを見れば
今年流行のチャドクガ毛虫が徘徊し
行先もないくせに動き回っている

メマトイがしきりに目の周りを五月蠅くし
いやがらせする
ブユは細かく舞っている
不快の塊だ
エゾハルゼミは狂っているから
疲れを知らない

みな、それぞれに
生きていることにすら気づかない
死を気にするでもなく
これからの事だけのために
螺子を巻かれている

前方の同僚の禿げ頭がゆらりと動き
ヘルメットが被られると
私たちの一服が終わる

風はまた止み
爆音が身を包む
私たちもまた虫のように
我を忘れる


自由詩 山林にて '18/05 Copyright 山人 2022-03-30 08:07:10
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