変態
山人

どこかに
負の生命体が惹かれあう
磁場があるのだろうか

変化の胎動は
終焉の胎動でもあり
虫が先々を急ぎ
蠢きだしていたのだ

狡猾な罠に気付かず
煌く夢におびき出され
重鈍な虫たちは
目を細め
不遇な体を不器用にひきずりながら
夜な夜な交じり合っていたのだ

夢の掃き溜めにキノコが生え
その湿度の中で虫たちは交尾した
荒地を好む雑草の
その横を卵が転がり
珍しい生き物が生まれた

   *
狭い校庭の中
ジャングルジムがあり
今にもそれは蕩けそうで
精一杯の笑顔で僕はしがみついていた
なのにジャングルジムは
冷たく骨を破壊する電流を流し
僕をはじけ飛ばした

あれから僕は
指から出る体液を吸い
唾液で絵を書き自慰した
僕は全裸になり
青臭い精液に身を浸し
煌く雷鳴を聞くのだった
痩身の僕は
蒼く尖った性器を爛れるほど擦り
精液を塗りこめるのだった

終令幼虫
それは青白く生を表現し
美しく燃える
一挙手一投足にその
蠢く快楽にまみれ
皮膚から突き出る淡い産毛が
浮ついた現世を味わっていた
薄青い肌に尖る空気を浴び
僕は幼虫として
体全体が性器になったようで
本当に気持ちよかった

想念が乾いた角質を形成し
熱せられた激情がゲル状にうねり
不穏な形状がつくられてゆく
怨念の血肉がうずき始める

 
時計が割れ
僕は成虫となる
脆い翅のまま飛び立たざるを得ない
狭窄された谷
降りしきる雪と氷
人いきれの嵐

そして、
神からの粛清
僕の複眼と複眼の間から打ち抜かれ
肛門へと真直に貫かれた青黒い楔
貫かれたこの楔と傷
全身を覆い尽くす爛れとケロイド

がじりがじりとバッタを食む
食むことと生を営むためだけの口
どんよりと辛うじて認識するがための複眼
がさりと翅を広げ
貫かれた楔を
この体をさらけだそう
この朽ち果てた
命のカスのような曇天に


自由詩 変態 Copyright 山人 2022-03-28 03:38:13
notebook Home 戻る  過去 未来