来訪者(六)
おぼろん

エインスベルには一つの覚悟があった。
この国を……クールラントを救おうと。
それはディペルスの街を救った時と同様であった。
恩は恩で返さなければならない。

「クールラントが我が命を狙うのであれば、
 わたしはその手の届かないところに行くだけだ。
 汝は、それが今だと言うのか?」
「はい、そうです」

ハザック・アザンとエインスベルは、
どうしても折り合いがつかない間柄であった、
アイソニアの騎士が亡命してから。
それは今生の別れのようでもあった。

アイソニアの騎士とエインスベルとは引き裂かれたのだ。
一つの陰謀によって。一つの企みによって。
「もう帰ってくれ。わたしはお前に用はない」


自由詩 来訪者(六) Copyright おぼろん 2022-03-28 02:40:07
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クールラントの詩