あなたが書いた絵をみてます
竜門勇気


8月に、おのれを見てから死ね
あわせた視線がそれて
さっきまで二人ついていた
食卓が無意味になる前に
無駄な予言が現実になる前に
唇をかすめてこぼれる水滴
待って待って、待ちわびた
エンドロールの見慣れた名前

渋く震える赤黒い冬の
最後に残ったひとかたまり
誰かが探してた
かもしれないし
誰かが迷って泣いてたあの街にあった
かもしれないし
侮蔑で組み立てるスイミングスクールの
水面に泡立つ短命なシャボン玉

8月に、鼓動を打ち鳴らす心臓
真空タンブラの中の氷が溶けて
やっと二人だけの食卓が
血だらけの僕らに歯向かう前に
汚れた聖書が意味を持つ前に
あそこじゃない丘に住んでた罪人の
待って待って、待ちわびた
壊れた月の白い遠景
沈んでく
沈んでく

あなたの物語を思い出すたびに
あなたが書いた絵をみてます
生まれてこなかったはずの
エンドロールが
壊していく物語を思い出すたび
あなたが書いた絵をみてます
二十文字ぐらいの
あなたが書いた絵をみてます

沈んできながら
沈んできながら
沈んでくときは
きっと一番空をゆっくり見てる時間だから
あなたが書いた絵をみてます



自由詩 あなたが書いた絵をみてます Copyright 竜門勇気 2022-03-22 11:48:20
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