坑道の中の歌うたいのカナリヤ
板谷みきょう
八月一日にボクは事故を起こした
札幌市からコロナウイルス感染症患者の
患者移送業務の委託を受けた車両
過失割合は8:2で悪い方がボク
頼りの保険会社に電話する
「現在、お客様が乗られている車は
保険に加入しておりませんが…。」
『否、そんなはずはありません。
保険料は、支払ってるのですから。』
「ですが、こちらの契約車両の登録番号が違いますし…
もしや、車両入替手続きをしてないのではないですか?」
『あっ。車は何年か前に買い換えましたけど。』
「そうですか。
その時、入れ替え手続きをしなかったのですね。
それでは、保険を掛けている車両とは別ですから
車両事故は保険適応にならないですねぇ。」
『そうは言っても、ずっと
保険料を支払っていたのですよ。』
「ですから、それは
以前の車両に対してですね。」
『それじゃあ困るんです。
何とかなりませんか?
救済処置みたいなモノは無いですか?』
「無いですね。
今回の事故は保険適応外です。」
けんもほろろに取りつくすべも無かった
つまりボクは、廃車にした車に
ずうっと
保険料を支払い続けてきていたのだ。
あぁ。なんて愚か者なのだ。
・・・
車の修理費用五十五万円と
八万円/日の業務保証請求の
相手側の保険会社から通知がきた
改めて弁護士から
正式な文書が送られてくる
ディーラー系整備工場から
修理には三十日はかかるという
8×30=240
に・に・二百四十万円の業務保証を
支払わなければならないだと?!
ボクは知人を介して弁護士を雇い
着手金十一万円を振り込んだ
それから六ケ月の月日が経ち
やっと修理費用や
業務保証費用に関して
弁護士同士で結論を出し
報酬金等を支払う段になった
…が
支払うお金が無いから
手当たり次第に借り入れ融資を
してくれそうな金融機関を探した
担保が必要なら家があるなんて
甘い考えで…
そこで初めて担保も保証人も必要ない
フリーローンの存在を知った
な・なんと便利な…
早速申し込みをし審査が通り
百五十万程のお金を
耳を揃えて全額返済したのだ
金利は13.5%と言われ
色々と説明をされたが
殆ど意味が解らなかった
しかしだ
いずれにしても
住宅ローンも入れて毎月十五万円を
何年間か掛けて返済すれば良いのだと
割り切って今日もボクは
唄うことが出来ずに現場で
働いているのだ