早春小景
塔野夏子
きらびやかな空が 剥がれ落ちて
菫の咲くほとりをたどって
指たちの
踊る環
ひとつ
ふたつ
みっつ
やわらかな綻びから
洩れる調べの
それは さよなら という言葉の
すずやかな輪郭にも似て
誰が いつ どこで
窓を開けたら
景色をゆっくりと融かして
銀いろの影を
こわさないように
――雨
回廊から露台へ
しずかなつまさきの
淡く眠る ひととき
自由詩
早春小景
Copyright
塔野夏子
2022-03-15 11:20:22
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春のオブジェ