十年前の思い出
板谷みきょう

東日本大震災の翌年
「北方派五分楽団」という
障がい者バンドの総帥のボクは
障がいを抱えている楽団員達が
励ましに歌を
歌いに行きたいと云う意見を
無視できずに
「仙台とっておきの音楽祭」に
参加することを決めた

仙台フェリーターミナルから
レンタカーに乗り換えて
沿岸部を見て回る
一年過ぎても
計り知れない傷跡が
残っていた

震災の傷跡は
想像を遥かに超えていた
直に
荒れ果てた惨状を
目の当たりにしても
実感が湧かないのだ

勾当台公園・滝前ステージで
歌い終えてから
他に歌える場所を希望したが

北海道の無名な障がい者バンドが
わざわざ歌いに来なくとも
有名な歌手が大勢
励ましに歌いに来ているから
結構ですよ

そんな感じで断られ
他では歌うことができなかった

今年で十一年目となるが
当時の多くの悲惨な映像を
思い起こすと同時に
「結構です」と断られたことも
思い出す



自由詩 十年前の思い出 Copyright 板谷みきょう 2022-03-11 13:11:51
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