水脈
Lucy

山育ちなので 傷は自分で嘗めて治した
月がしだいに瘦せ細り また少しずつ太るのを
薄目を開けて時々見ながら
朽ちた倒木の根元の洞に潜り込み
飲まず食わずで幾晩も

痛みは知りません 傷ついたことはありませんでしたと 
言えるまで
鱗のような瘡蓋は 幾重にも重なり鎧になった

凍り付くような月の夜
なけなしの息を掌に吐いて
鎧に隠れ 休みなく
さくさくと土を掘り起こす

知らない間に零れた種の
蒔かれた毒の芽吹かぬうちに
汲めども尽きぬ泉を掘り当て
荒れ地を根こそぎ洗い出すまで


自由詩 水脈 Copyright Lucy 2022-03-01 22:29:52
notebook Home 戻る