戦争の親玉
TAT
ライオンには掟があって
ライオンにも掟はあって
決して豹を食べない事
豹には家族があって
18時に帰れない日には
玄関マットの裏に鍵が隠してある
耳がちぎれそうな冬の朝に
戦車が土足で踏み荒らした地域が
僕らの地球の上にあるなんて信じたくないよ
政治とか時代の風に
心の琴線を触られて
詩を書くなんて最低だ
最低の気分だ
俺は今日は本当は
冬の柿について書きたかったんだ!
冬の柿の木が
寒い青空に枝を伸ばしていて
朱色の果肉が
ぼってりと風にさらされている様を
或いはその中の幾つかは
地面に落ちていて
車に轢かれている
車の轍が
柿の血や肉を
飛び散らせた先では
竹林の片隅
ランドクルーザーがアイドリングしていて
それを運転している建設業の男と
後部座席のパート帰りの女
鼻に絡むような香水の匂いと
これから行われる不貞の行為
そういうのを書きたかったんだ
そういうのを書きたかったんだ
なのに最悪だ
自由詩
戦争の親玉
Copyright
TAT
2022-02-26 02:22:45