自由詩「労働」2022.02.25(金)
田中恭平


温暖な地域に生まれ幸いの
私はふくよかな無となって
きょうも倉庫で働いた

肉体労働はテンポが大事
加えて呼吸
じぶんを倒して

あたらしいじぶんになる、勇気

とにかくガンガン詰め込むんだ
荷役の俺には
人間関係なんて関係ないぜ
──それでいいの?─
疑問が挟みこんできても
黙るしかない
笑えてりゃ尚いいけどな

ほんとうのじぶんとは?
家の中に帰ってにっこりするじぶん?
いやな、そりゃ冷たい氷柱だよ
わかっていてもそうなんだ
妻よ
何を訊いても意味ないよ
答えられるひとはとっくに喋っているし
俺が変われるならとっくに変わっているんだよ

滲みこんでいくんだ
へやに滲み込んで誤魔化すんだ
嫌じゃないよ
むしろ好きだね 俺は空っぽ、又は氷柱だから


温暖な地域に生まれ幸いの
私はふくよかな無となって
きょうも倉庫で働いた


  


自由詩 自由詩「労働」2022.02.25(金) Copyright 田中恭平 2022-02-25 21:58:48
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