東風
末下りょう
スクランブル黄砂店
パチスロ屋の静寂とLED 鋭い不眠 べべの乱れた地蔵に供えられたカラフルな駄菓子 懐かしい夜がいくつかの雲を通り過ぎ 行き交う野ざらしの魂たちが 側溝のゴミ屑を星のように吹き上げる
老いやすい少年少女のケツペタと
路面のカップラーメンが
駅前の動線を支配する
街中に溢れる幽霊に春を巻いて 虹を透かして川に飛ばしたきみがいない
ヘイトを愛にくるみ 傷を透かして朝陽に燃やしたきみがいない
蒸籠から飲茶の匂いが通りを移動する カリカチュアの溜まる交叉点の 冬虫夏草
チャイナドレスと呼ばれる衣装を
夜風に溶かす女が
地図から消えた街に手紙をだす仕草で
小皿を並べていく
円卓の回転に置き去りにされた会話と 胃袋の浮遊感を抱えたまま
他人とハニーとからだを重ねる
つめたい踊り
サイズ感のない冬着を着替えて 電車を乗り換えると東風
線路から吹きつける
生暖かい夜の息が 赤らんだ顔一面に被されば
思わせ振りなくだらないハッタリに秘密はなくなり
猫たちが何処かに行って死ぬように僕たちは此処に来て安らかに眠る
老いやすい少年少女の
路面のカップラーメンが なると東風