クシュリーとエインスベル(二)
朧月夜

「たしかに、エインスベルはレ・スペラスとの戦いで功をなしました。
 しかし、それが本当に私情を廃してのことだったでしょうか。
 エインスベルは、己の私益のために戦ったのではないですか?
 それは、アイソニアの騎士にしても同じことです」

クシュリーの言葉に、戦士エイソスは返す言葉がなかった。
「それは、そうかもしれない。アイソニアの騎士は、
 わたしの無二の友人であったのだ。それが、
 今では、アースランテの国へと亡命しようとしている」

「そこなのです。本来、騎士とは国のために尽くすべきもの。
 今のアイソニアの騎士にとって、クールラントは敵国でしかありません。
 あなたは、そこのところをよくご存じでしょう?」

「エインスベルにとっても同じことです。いつかは、
 国にとって仇為す存在となる。誰がそれを否定できましょうか」
クシュリーの発言には一理があった。戦士エイソスはそのことを否定できなかった。


自由詩 クシュリーとエインスベル(二) Copyright 朧月夜 2022-02-21 19:04:23
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クールラントの詩