魚の頭 2
AB(なかほど)

  

 かたり。音がするから置き場を探して、そこじゃない、そこじゃない、と帰る場所が消えてゆく。昨日までいた場所に、君がいないのならば、もう。


 雨降り。夜の八百屋、メロンとむきだしのふとももと聞き屋の賛美歌としゃがみこむ娘とそれから、それからもう少しで、もう少しでにじみそうな明かりと全部忘れてしまいそうな忘れられないこととにぎりしめたものと。

 つながらないまま、かたり、かたり、と。

 君がいないのならばもう、もう、この町はこの町ではない。そのあたりまえなことにつながらないまま、帰る場所を探している。

 心が置き場を探している。


  


自由詩 魚の頭 2 Copyright AB(なかほど) 2022-02-18 18:55:07
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