どんな掃除婦にも
竜門勇気


公明正大で
だけどちょっと尊大
自分のクソは
始末できるけど
あいつのだけはムリ

車に乗った大きな猫
つま先立ちで見ているけど
壁の向こうの小さなヘド
誰かが転ぶまで僕は笑わない

ひたいの目
作られた災厄
どんな掃除婦にも
そこの炭鉱夫にも

気持ちよかった
あんたの暴力
どんな掃除婦にも
そこの炭鉱夫にも

左で鳴った
きれいなニオイ
くさってそのまま
誰かの右
 高等な嘘
 下等なフィクション
  探しだした
  無能の守護者

死体の目
射精したあとの
魚とかそんな感じがする
どっかの掃除婦のうろつきまわる便所で
長ったらしい小便をする
何故か謝りながらさ
お互い気まずい雰囲気だ
どうでもいいルールをお互い守ってる
どっちが先に悲鳴を上げるか
話し合いの場を持つべきだ
現実ではそうなってる
悲鳴を上げるサイドとそうでないサイドで分かれてる

子供のロジック
羽ばたくのに飽きた
ヒヨドリはきっと生きてはいけないよ、みたいなやつだ
珈琲屋の先客の炭鉱夫と長話してる気分さ
長ったらしいのはいいことなんだって
お互い知っている
こんなときならそんなもんかもな
どっちが先に悲鳴を上げるべきかということに
話題を変えるべきだよ
”先日はこんなに混んでなかった......”
そんな不思議な出来事の話はおいておこう
ああ、不思議だ、なんて、不思議なんだ!

気持ちのいい轡を噛まされた
お気に入りの道具が
ハメを外した指先に壊される
犬の放し飼いなんて当たり前だこの街じゃ

ニオイのきつい服ばかり
飛ぶように売れるよ
古着屋が外れた金歯を
机に並べて笑う

気が狂った犬が
どの家にも一匹いる
ただの一瞬のさみしい嬌声が
一歩足を進めるたびに大きくうねる
立ち止まればそれは止むけど
すぐに遠吠えが始まって
あちらからこちら
頭がすこしだけまともになってしまいそうに
正弦波が響き
その少しだけ違う周波数がまたうねる

ひたいの目
作られた災厄
どんな掃除婦にも
そこの炭鉱夫にも

気持ちよかった
あんたの暴力
どんな掃除婦にも
そこの炭鉱夫にも


自由詩 どんな掃除婦にも Copyright 竜門勇気 2022-02-10 00:41:13
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