湖畔/ひねもす/西
AB(なかほど)

 
ふいに淋しく/なんて口にしながら/随分と
正体も無くして/やがて眠りにつく

ひとの子の様で/子猫の様で/寝息とその顔は
野に咲く花が/白い野の花が揺れていた畔と
蝋燭の記憶/人間の記憶

雲かかる/もうじき降りだす/傘はささずに
駆ける足下の野の花も/瑠璃色になる

ふいにさみしく
 なんてくちにしながら
  ずいぶんと
   しょうたいもなくして
    やがてねむりにつく

ひとのこのようで
 こねこのようで
  ねいきとそのかおは
   のにさくはなが
    しろいののはながゆれていたあぜと
     ろうそくのきおく
      にんげんのきおく

くもかかる
 もうじきふりだす
  かさはささずに
   かけるあしもとのののはなも   
    るりいろになる


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春の/ルミエールという/野原のアパート
海は、夢、努々にも/見えず

ひねもすの/眠り/戻れない、戻らない
全ては/野の花の中
たくさんのあなた/竜胆のあなた

のたりとするは/揺蕩う僕の/理由なく
かける言葉なく/名前も呼べず


はるの
 るみえいるという
  のはらのあぱあと
   うみはゆめ、ゆめゆめにも
    みえず

ひねもすの
 ねむり
  もどれない、もどらない
   すべては
    ののはなのなか
     たくさんのあなた
      りんどうのあなた

のたりとするは
 たゆとうぼくの
  りゆうなく
   かけることばなく
    なまえもよべず


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名を知らぬ/野辺に寄り添う/春二つ
凪いでも鳴かぬ/やがて泣きぬる

告げるもの/聞こえぬふりの/母の手の
彼岸の先の/蒲の穂の
しとりしとりの/虹の向こうの

日の入りと/餞ありと/にじむ人
報せがありと/庭の青鳩


なをしらぬ
 のべによりそう
  はるふたつ
   ないでもなかぬ
    やがてなきぬる

つげるもの
 きこえぬふりの
  ははのての
   ひがんのはなの
    がまのほの
     しとりしとりの
      にじのむこおの

ひのいりと
 はなむけありと
  にじむひと
   しらせがありと
    にわのあおばと

 
      

        
      


自由詩 湖畔/ひねもす/西 Copyright AB(なかほど) 2022-02-06 18:20:46
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