復讐が終わって(四)
朧月夜
ユーラディアの谷を行く、エインスベルの足取りは重かった。
すでに、復讐を成し遂げてから三日の日にちが経つ。
そんなエインスベルの横顔を覗き込んで、アイソニアの騎士は言った。
「アースランテでは、俺を聖騎士に取り立ててくれるそうだ」
「そこに危険はないのですか?」エインスベルが問う。
「どの場所にいても、同じことだ。クールラントも平和ではない。
人の上に立つものは、常に下の者から命を狙われ、
人の下に甘んじるものは、常に上の者たちから搾取の対象にされる」
「では……」と、エインスベルは言った。「これを」
それは、薄紙に包まれたグロリオサの花だった。
エインスベルは、一冊の魔導書にそれを挟んで、アイソニアの騎士に捧げる。
「これをわたしだと思ってください」
「エインスベルよ、俺たちはまたいつか出会うことになるだろう。
その時には、敵同士かもしれない。別れの花が、グロリオサの花だとはな」
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クールラントの詩