つらつらつらら
そらの珊瑚
つらつらと つららのことをおもってみていた
軒先に根をはやし
重力に逆らいながらも
きりりと尖ってうつくしい
冬がこしらえた期間限定のその造形は
猫とじゃれたあと
うつらうつらしているうち
だれも傷つけないで
だれにも傷つけられないで
水溜まりになっていた残念さを
いくつも
いくつも
季節を見送って
ふたたび
おもいだしたから
あの頃
今より冬はうんと冷えていて
軒先のある家があった
ながいいちにちのかなりの時間を
つららをながめることに費やしていた
「なあに見てる?」
祖母の声はいまだ耳の奥底に住んでる
「ううん、なんにも」
おかえり つらら