つらつらつらら
そらの珊瑚

つらつらと つららのことをおもってみていた
軒先に根をはやし
重力に逆らいながらも
きりりと尖ってうつくしい
冬がこしらえた期間限定のその造形は
猫とじゃれたあと
うつらうつらしているうち
だれも傷つけないで
だれにも傷つけられないで
水溜まりになっていた残念さを
いくつも
いくつも
季節を見送って
ふたたび
おもいだしたから

あの頃
今より冬はうんと冷えていて
軒先のある家があった

ながいいちにちのかなりの時間を
つららをながめることに費やしていた
「なあに見てる?」
祖母の声はいまだ耳の奥底に住んでる
「ううん、なんにも」
おかえり つらら


自由詩 つらつらつらら Copyright そらの珊瑚 2022-02-04 11:38:42
notebook Home