雪のさだめ
st
猛烈な冬の寒波に見舞われた
はるか上空の雪雲のなかで
ひっそりと生まれたのは
ちいさなちいさな
六角柱の結晶たち
雪雲の中を風に吹かれて
上昇したり落下したりと
いろんな雪雲の中を通り抜け
みんな楽しそうに暮らしている
やがて
雪の結晶たちは大きく育ち
ふるさとを去る時が迫ってきた
きみたち
キラキラ輝く宝石たちを
たくさんくっつけて
とってもきれいで大きくなってきたね
そろそろ
下界へおりてゆく準備をしなくちゃぁね
と
雪雲の母さんが
雪の結晶たちにささやく
あんなきたない下界におりてゆくなんて
いやだなぁ
もっと長く
母さんたちの中で暮らしたいよ
と
雪の結晶たちが
雪雲の母さんに泣きついた
バカいってんじゃあないよ
下界の金満人間みたいなことをいってると怒るよ
下界じゃあ
金持ちになればなるほど
幸せになるってゆうけど
ここじゃあ通用しないよ
宝石がふえて重たくなったら
下界へ落ちるのがさだめなのさ
あんなによごれた下界だから
それを浄化するために
神様が創られた尊いシステムなのさ
でもね
浄化がおわって水蒸気にかわり
再び身軽になったら
上昇気流でここに戻れるよ
それまでの辛抱さ
下界の人間だって
お金はもちろん
その体さえ捨て去って
魂だけの身軽さにならないと
この天空には昇れないのさ