詐病
末下りょう



誰もいなくなった クラシカルな応接室のロングソファーで気だるくしなだれ 
祭司の仕草に告白をうながされるように
密告した

青い詐術  後追いの3秒 の 失禁

その温もりだけを飲み干す



薄っぺらなスリッパのソールに刺さった画ビョウの音が カチカチと錆びていくあいだ 
濡れた花瓶 面会人の面影が逃げ去る病室のカーテン 陽当たりの悪いガーデンに見え隠れした朝が
去った

解剖台の上には もう雨傘もミシンもなく* 
つまりは もう開くものも閉じるものもなく 開かれた皮膚は閉じられた傷口をさがして
蝶のように 震えている


ぼくが矛盾しないことをぼくは証明するすべをしらない

世界のすべての傷口が蝶のように夜に消える


息を吐いたときにだけ現れるきみには青い花もなく

暗い
廊下の奥のレントゲン室から 放射を浴びたきみの胸元が夜を透かす裂け目のような
ロールシャッハとして
光を求めている




自由詩 詐病 Copyright 末下りょう 2022-01-22 12:16:53
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