詐病
末下りょう
誰もいなくなった クラシカルな応接室のロングソファーで気だるくしなだれ
祭司の仕草に告白をうながされるように
密告した
青い詐術 後追いの3秒 の 失禁
その温もりだけを飲み干す
薄っぺらなスリッパのソールに刺さった画ビョウの音が カチカチと錆びていくあいだ
濡れた花瓶 面会人の面影が逃げ去る病室のカーテン 陽当たりの悪いガーデンに見え隠れした朝が
去った
解剖台の上には もう雨傘もミシンもなく*
つまりは もう開くものも閉じるものもなく 開かれた皮膚は閉じられた傷口をさがして
蝶のように 震えている
ぼくが矛盾しないことをぼくは証明するすべをしらない
世界のすべての傷口が蝶のように夜に消える
息を吐いたときにだけ現れるきみには青い花もなく
暗い
廊下の奥のレントゲン室から 放射を浴びたきみの胸元が夜を透かす裂け目のような
ロールシャッハとして
光を求めている