眺めてはいるのだけれど
坂本瞳子

船が大海原を彷徨っている
誰も乗っていない
人がいたような形跡はある
放置されたようなオールと
タオルが一枚
それから左のサンダル
鮮やかな赤い色の大きなそれ
水が少し入ったペットボトル
船乗りは波にでもさらわれてしまったのか
大きな船の甲板から
波間を漂う小さな船を
こうして眺めているのだが
なにかしてやる必要があるだろうか
否、ないだろう
だって誰もいないもの
それとも遺留品を陸地まで持ち帰って
覚えのある人を探してやろうか
そんな必要があるのだろうか
そこまでしてやる必要が
誰か教えてくれないだろうか
なにをどうしたらいいんだろう


自由詩 眺めてはいるのだけれど Copyright 坂本瞳子 2022-01-21 13:16:57
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