メイ/ソネット
tonpekep
五月になれば 静かなものたちが風に揺れる
栞の挟んだ読みかけの本を開いてみる
わたしの記憶はそこでたちどまっている
色褪せた光の染みを読むように頁を捲る
その先を読むことも また
許されて良いくらいの年月を経たことも
今じゃ感謝している
わたしの過去は 美しい音を奏で始めている
わたしは ここに生まれ ここに育ち
そうしてこの町に降り注ぐ光の下で
ずっと暮らして行くだろう
わたしの知り得るわたしの空は
いつまでも青い箇所がくすぐったい
黄砂がときどき光に擦れている