耳鼻科の名医
壮佑

鼓膜の炎症と診断され
メスで切開する簡単な手術を受けた

痛いですよとの説明どうり
痛かった
確かに痛かったが
症状は嘘のように楽になった

あの先生は名医だ
その思いを強くしながら
数日後に再び受診した

「まあだ耳鳴りがしますかの?」
「いえ、ほとんどしなくなりました」
「ふうむ、耳鳴りがしましょうのう…」
(え? しなくなったんですけど)

すかさず女性看護師が飛んで来て
医師の耳に口をくっ付けんばかりに
「し・な・い!」とでかい声
医師は きょとん

足腰もだいぶ衰えておられたが
手術に臨んでは老いてなお矍鑠としていた
あの先生は名医だ 名医なのだ

痛かった
確かに痛かったけど…





自由詩 耳鼻科の名医 Copyright 壮佑 2022-01-16 12:24:06
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