盗賊ヨランの失敗
朧月夜
盗賊ヨランは、ほとんどの盗みに失敗したことがなかった。
しかし、一度だけ失策したことがある。
それは、グローリア夫人の屋敷へ盗みに入った時のことだ。
グローリア夫人の家は、カラスガラの中でも名家とされていた。
盗賊ヨランは、グローリア夫人の指輪を盗もうとしたのである。
盗賊ヨランは、透明になる魔法「ハッチ・グラナ・デイ」の薬を飲んだ。
これで、誰の目からも盗賊ヨランの姿は見られなくなるはずだった。
しかし、グローリア夫人は一枚上手だったのである。
高貴な指輪である、アンクレアの翡翠には、何重もの魔法がかけられていた。
その中でも、「アルザ・カイ」は、「ハッチ・グラナ・デイ」をも破る魔法だった。
「誰か!」と、グローリア夫人は声を上げた。
そこには、丸裸の盗賊ヨランがいた。服が見えてしまってはいけないからである。
「あら、あら。裸の子供が盗みに入るなんて」と、グローリア夫人は言った。
盗賊ヨランは、顔を真っ赤にしながら、グローリア夫人の邸宅を後にするしかなかった。
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クールラントの詩