トーメーコーソク
末下りょう



夜の透明に拘束されて 光速で走り抜ける  東名


遠目で姑息なエリアを抜け二度目の約束に足止めを食らい
孤独なパーキングエリアには排ガスと血のめぐりの悪い野良猫たちの愛撫の匂いが入り乱れ 漏れたオイルが泥と雪に混ざりレイヤリング化したテールランプの灯りを水風船のように増殖させていく 東名


チアノーゼの自販機コーナー
ゴシック体の防風林
何処よりもありふれたメニュー
大規模工事を報せる看板
粗い紐と青いビニールでぐるぐるに縛られた屋台
パイプ椅子に掛かったままの紺色のジャンパー
破れた新聞と濡れた週刊誌
紙コップのなかの煙草と薄いコーヒー
べつに吸わなくてもやり過ごせた煙の匂い
残飯に残された歯形
記号化したサービスと
空洞化したエリア


どこからも見えない海辺からの風が透明な拘束を解体していく だいたい


闇以下の雪を頬張り
泥以下の光を飲み干す
ぼく

雨雲のように千切れながら流されていくなかで
しらない花びらがくるくると
こともなげにいくつかの光速を透明に巻きつけながら排水溝にたまっては 消える
記憶は神話
深夜

東名




自由詩 トーメーコーソク Copyright 末下りょう 2022-01-11 17:15:18
notebook Home