或いはもう捕らえられているのかもしれない
末下りょう
或いはもう捕らえられているのかもしれない この一歩は前進なのか 後退なのか
走っているのは内側なのか 外側なのか
内も外もクソもないのか
ここは何処で何処を目指していつ何処からなぜ走り出したのか
走っているあいだに何が失われているのか 走っているあいだに何が生まれているのか
ひたすらランナーのふりをして
何度も振り返りながら
足脚や背中に鋭い痛みが走りもするけれど
それもまたナルシシズムの舞台装置かもしれないと疑いながら
自らの息遣いを間近に
追跡者の足音から逃げ惑うように
ただ走り続けている
ただ 断続的に浮かぶ悪夢のような失神に落ちた街を
走り抜けていく
だれもが自らの沈むべき夜の欠片を追うように