「看護は母性です。」
板谷みきょう

洗面所で顔を洗って
何度も
口を嗽いでた児玉が

「オレ、梅毒になんかなりたくねぇよ。
まだ女も知らない童貞なのに。」

トロミを付けたおつゆも
刻んだオカズも
お粥に混ぜ混ぜにして
口に運んでいく時に

飲み込みと
口に運ぶタイミングを
合わせるよう

「ハイ。ア~ン。」

繰り返しているうちに
知らずに自分までが
大きな口を開けしまう

「咳き込んだ時に
全部,顔にかかって
口にまで入ったんだぞ。」

彼が担当した痴呆老人は
脳梅毒の患者だった

看護学校では
元看護婦だった教員に
嫌味を言われる少数の
男子学生だった

  看護婦は白衣の天使
  ナイチンゲール精神
  母性が一番大切な
  女性の天職だってことを
  知ってますか

そう言われ
邪険にされていた

病院で与えられた仕事のひとつが
寝たきりの痴呆老人の
食事介助だった時のこと


自由詩 「看護は母性です。」 Copyright 板谷みきょう 2021-12-31 19:48:46
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