アスペルの街にて(一)
おぼろん

アスペルの街には、当時老魔導士オスファハンが住んでいた。
エインスベルは彼を訪ねて行ったのである。
「なぜ、ここに来た?」オスファハンは尋ねる。
「家を買いに」エインスベルは答えた。

「ははは、それは本当の理由ではあるまい」
魔導士オスファハンは、すぐにエインスベルの意図を見抜いた。
「家がほしいのであれば、カーガリンデの街に住むと良い」
老オスファハンは、それとなくエインスベルを窘めた。

奴隷市場でエインスベルが売られていた時、彼女は十歳だった。
それが今では十八歳の成人の女性になっている。
彼女には野望も野心も、目的もあるはずだった。

実は、彼女は「ガラセラの樹」のことを知りたかったのだ。
ガラセラの樹はあらゆる魔法を可能にする、魔法石を宿している。
オスファハンは、それとなく彼女の意向にも感づいていたのだ。


自由詩 アスペルの街にて(一) Copyright おぼろん 2021-12-29 10:00:23
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