屍斑と聖盃
あらい

点いたり消えたり、漏れや落ちがある、ひのあかりで。はなが曲る

悪趣味な画伯の私室で待ち望んだ。煉瓦色の長靴に(かざる)
ごわついた作り笑いに、耳元で囁く。ほころびて(わらう)

棄てられたものに新しい命を吹き込む。恥も外聞もかなぐり捨てて。
はぐくみ
―― ゆがめられた縞模様、ピアニッシモの(風がおさまる)

案の定。

「レースのカーテンをまいて、天使にしようか」
声を振り絞る、屈折した葉先には皮肉っぽいだけの柔らかな光
ありふれた食材に手を付ける、床に埋め尽くされる、脱衣

傘を差しかけるどんぐりの時期

憚る譚。

チクタク ごねるだけ、ヴェルベットの舌が海を巣食う、
すんだ音、弓なりの実。よりどころ、ともなって 顔ぶれを

前垂れに(差し汐)
       防ぎきれないワイヤロープ。
並べる(夜具)

先駆ける祝い
頬を染める白檀、むちゃくちゃな神仏の光明

捕らえ縛る噴き出して汚す、本音を彷彿とさせる終尾

暗い顔つき
罪に問われることはない季節は次々死んでいく

そして今も口笛を花唄を隠逸する。(紫瘢の、あと)


自由詩 屍斑と聖盃 Copyright あらい 2021-12-23 23:27:42
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