煙に巻かれて

煙草の煙越しに古い写真を見る

空は宵闇を纏い人の声も消えて

瓦礫に埋もれ消えたはずの声が

机に置いた珈琲に淡い波紋を作る


置時計の古びた音が心を刻む

古書の匂いと共に今を生きている

この場所で朽ち果てたいと願う

過去に抗える静けさがそこにある


客人が煙草を時々寄越してくる

私には悼むものが多すぎるから

全ての声が眠りにつくそのとき迄

焦げ付く煙に身を任せたいと思う


自由詩 煙に巻かれて Copyright  2021-12-19 18:18:20
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