何のための戦いか?
朧月夜
「アイソニアの騎士よ、お前は何のために戦うのか?」
吟遊詩人は歌う。
「それは名誉のためか? 金のためか? 信義のためか?
どれも違うようだ。では、憐憫のためか? 友情のためか? 愛情のためか?」
それらも皆違っている。クールラントの民の中には、
「アイソニアの騎士には、アスファルテの魂が取り憑いている」
と言う者さえいる。
アスファルテとは、アースランテの戦いの亜神の名前だ。
アイソニアの騎士は、敵の流した返り血に染まることを厭わない。
そして、自らが穢れていくことをも厭わない。
時には正義のために戦うこともあるが、それが全てとは言い切れない。
リーガンテの街を救った時にも、わずかに得られたのは二〇ギンテだけだった。
これでは、三月分の生活にも事足りない。つまり、金が目的ではなかったのだ。
アイソニアの騎士がなぜ戦いの道を選ぶのか、それは本人にさえ知り得ないことなのだった。
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クールラントの詩