UFOの断片
イオン

そそられる記事だった
「UFOの断片が初公開!」
「福島市で特別企画展開催!」
私は家族にわびを入れて
行かなければならないと厳冬の中
オートバイで1時間走り続けた

アメリカがUFOの存在を
正式に認めた今
断片の信憑性は高くなっている
期待が寒さを跳ね除けていく

しかし不安はあった
月刊ムーとのコラボレーション企画
それがフェイクかどうかは
現物を見た人にしか語れない
その語る権利を得るために走り続け
入場料を支払った

破片は灰色でわずか1センチ角
微量の放射能を帯びた金属箔
写真撮影禁止
真贋かどうかのエビンデスは
採取した状況のみだが
入場者は後を絶たない
「イチエフで拾ってきたんじゃないの?」
私もふくめて
騙されても笑い飛ばせる人が
こんなにいるのか福島県
だから東日本大震災の爪痕にも
耐えてこれたのだろうか

私は見たのだ
UFOの断片を!
帰宅して家族に熱く語っても
良かったねで留まる
職場で語れば
仕事を頼まれなくなりそうだから
もう心に仕舞うことにする
いつかUFOが現れて
語り部となれるその日まで


自由詩 UFOの断片 Copyright イオン 2021-12-11 10:14:50
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