渇いて剥がれて塗り重ねる
若林はじめ


季節のせいだろうか
歳のせいだろうか

渇いて剥がれてヒビが入った
自分をたもつことができない

シャワーをあびて水分をとっても
包帯で皮をぐるぐる巻きとめても

それは滑らかにこぼれて
大切なものほど簡単に
失われてゆく

だから

わたしはわたしが知る限りの
記憶の中の自分を塗り重ねる

そうやってわたしは
少しずつ変わってしまうのに
誰一人として気づかないから

わたしは今のわたしを
まるで別の生き物を見るように
淋しく抱きしめている

 


自由詩 渇いて剥がれて塗り重ねる Copyright 若林はじめ 2021-12-10 17:17:10
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