あっち
soft_machine

本日はうすぐもり
昨日までの寒気が
ぐっとやわらいだ宵だ

どれくらいからか
しだいに欠けてゆく月が
おおきな指さきの爪になって
あしたは、あっちだ
迷わないでおいで、と
指さしとんでゆく
星をともない
雲のぬい目をてらし
音もなく南天を漕ぎすすむ

そうか、あしたはあっちかと
おもうのだけれど
わたしの場合
すすむ道とは向きが異なるな
などと公園のベンチに見上げ
街光のうずにまかれていると
衛星のひかりなど微々たるものだが
それ以上にゆるがぬ
うつくしさを湛える

月に背をむける人
月に胸をむける人
空を見る人
見られる人
誰のあしたも、あっちだ



自由詩 あっち Copyright soft_machine 2021-12-09 19:14:43
notebook Home 戻る