彼方肆
あらい
私たちは過去に梅雨晴れの菜の花をふつりと亡くしている
重ねられたむしろ、奥座敷には、立ち返れば
少女 ひとつ、気配すら ままならない
4つかぞえるうちに 喉が鳴る。心臓が弱いらしく、ひとり死んだ
3こならべたのに 風が収まる。引き倒した休憩所でひとえ 消えた
2つころがるように 傷心を抱く いずれ、朝な夕な ひとつゝきた
ひとりみせしめるように 焼けている浮世を真っ白に削る
声帯模写と処方箋は みだらに開いていた
永久歯に驕慢と名付け、チチいうクッキーを挟める
ハートフルな経験をぐずぐず流す冷や汗とエゴスティックに茹だる
星を拾うだけ
葡萄樽の中から 満ちては引く 眺めはまたソシアリズムの蟠り、
どれも豊満だった、ローレライがうたい 雷雲を刺した陸に
足だけを残して消えた、あぶくだけが鮮明なひと
入れ替わる山吹色の陽気は振動する、街となる繭は明るみに出す、
誘導妄想
毎夜毎夜読み聞かせられた 白檀の婚式に小股でさすらう
小動物の足跡は毎日とちがう。というのに
それを履いて 月に照らされた未知を往くとき
感嘆を及ぼす自傷エトランゼ、先端を行く旧臘のくねり途、
待ち針の外れた手傘に、蝉しぐれが場所を空ける
旧記の今生を反芻する振恤の限りに、
桐の箱の中で羽化しようとする、エメラルドの、ひとかけ。
まばゆく思いはばたくとき