しでむし
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痛みというものが こわくないから
なぜ泣くのかも 分らない
ひとりだって 平気です

身体よりも はやこころ砕け
足あとだけは 感じているのか
文字に見えない けれどはっきりと
ことばだってある 虫にもね

おはよう、それから おやすみ
ありがとうもね、解る さよならも
ごめんなさいだって 知らなくはない
手にしてくれたら きっと伝わる

そろそろ身体と 剥がされていくけど
運がよければ あとすこし生きてる
気まぐれや 何かついでに

すっかり干乾びた 埋葬虫が
冬夜をつかんだ 指さきにある

月色の砂州に折木を いくつもつき立て
ねむれ、ねむれと みんなでいのった
古わたを敷いた 欠け器ごとうずめ

ひみつの会話に 蓋をとじ
季節の終りに 羽根をかくす
わたし達は なんども踏みつけ



自由詩 しでむし Copyright soft_machine 2021-12-06 20:20:40
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