「海に行こうと思ったのは」
ベンジャミン

きみがとつぜん
海がみたいと言ったから

 きっと寒いよ?と言ったのに
 小さく あったかいよと言い返されたから

ひとのいない砂浜が
どこまでも続いている

 どこまで行くの?と聞いたのに
 小さく 行けるところまでと言い返されたから

ふたりぶんの足跡が
あたりまえのように並んでいる

 いつまで歩くの?と聞こうとしたのに
 いつまでいるの?と言い間違えたのに

きみは手のひらにのせた小さな海を

 やっぱり冷たいと 小さく笑って
 だから言ったのにと 僕も笑って

いつまでもこんな時間が続いてほしかったから
僕も手のひらに小さな海をのせて

 おもったよりあったかいかもって言ったら
 おもったよりあたたかいんだよって

小さく きみが言ってくれたから


  


自由詩 「海に行こうと思ったのは」 Copyright ベンジャミン 2021-12-05 00:03:50
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