こっち見んな
いる

あなたの言うあなたが誰なのかわたしは知らないし
押し入れは騒がしい
新しい殺虫剤を買い
特に何もせず昼を夜にする

手を汚したくなかった
「手を汚したくなかった」
まあそうだよね

主観的に
頭上を覆っている徒歩十五分のスーパー
それから
急に人が増え世界の終わりだと
写真を撮っていた単に赤いだけの夕焼け

「知ってるよ そこにいるのはさ」
知ってるよ
そこにいることを知っていることはさ
そういう約束で社会は回っている
ただこっち見んな
こっち見ても どうせ
顔くらいしかない

あなたが窓の外へ乗り出して何かを
漏洩させているその状態を支持する

わたしの言うあなたが誰なのか知らないし
わたしの言うわたしが誰なのかも知らない
どうせまた聞こえるだろう
「そこ」を指し続ける絶叫

しかしなお押し入れの中では
特定不能な原点どもが騒ぎ
死にながら世界は増え
誰かが
明日もスーパーには行かなければならない


自由詩 こっち見んな Copyright いる 2021-11-29 08:49:41
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