柿の知らせ
服部 剛

庭で夕空を仰いでいると
足下の、少し離れた場所が 
ふいに がさっ と鳴った

古い柿の木から
枯葉の吹き溜まりに
実がひとつ、落ちたのだ

よく熟れた柿は
ほんのりと夕陽に染まり
僕に微笑む

(なぜきみは、そんなに幸せそうなのかい?)

家に入り 
食卓で腰を下ろし、茶をすする 
静寂しじまのひととき 

幸いを黙して語る、柿の実よ 
僕は想いを巡らせる 
機が熟すのを、待つように








自由詩 柿の知らせ Copyright 服部 剛 2021-11-18 23:17:29
notebook Home