間抜けな盗賊ヨラン
おぼろん

間抜けな盗賊ヨランの話をしよう。
間抜けな盗賊ヨランは、(勇猛果敢なはずの)ドワーフのくせに、
ベル=ダッジアのように臆病だ、と言われていた。
しかも底抜けにとんまな奴だと。

ある時、ヨランは酒場の酒樽の中で眠ってしまった。
怒った酒場の主人は、ヨランの尻を蹴って酒場から追い出した。
また、間抜けな盗賊ヨランは、小鬼のピクシーを見てすら、
びっくりして震えだすとも噂されていた。

しかし、パトロンの依頼をこなすにあたっては、盗賊ヨランは完璧だった。
どんな物でも、ヨランに盗み出せないものなどなかった。
たとえ、それがガラセラの樹に実る、七色の果実のようなものであっても。

間抜けな盗賊ヨランは、吟遊詩人にとっては恰好の題材だ。
ヨランを主人公にすれば、どんな面白おかしい話でも作れるのだから。
しかし、これだけは言っておこう、間抜けな盗賊ヨランは誠実な男だったと。


自由詩 間抜けな盗賊ヨラン Copyright おぼろん 2021-11-18 12:53:51
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クールラントの詩