堕天
46U

翼をもぎました
背中がかるくなりました
しとどに流れる血 真珠色の血あふれて
ふたすじの傷口を 白南風しらはえがなでて過ぎゆきました
すずしい背中
六月のこと

あなたの手をとりました
しとねには茨がしきつめてありました
すこし 痛いけれど
いいえ 平気です
だって 黒い茨花ばら つぎつぎに咲くのですから

夢のようです あなたに抱かれること
あなたの執着を得たこと
あなたに飼われること

夢のようです 涙があふれます
あなたの貌がにじんで見えない
愛にめしいた琥珀の瞳

ばらの棘で両の眼を刺して
あなたの棘で麻酔をうけて
翼はもいで棄てたから もう わたしはただのおんな
寝台の上 仰向けになり あなたの重みを受けとめる ために
背の翼
邪魔でした 翼
それが堕天の理由のすべてです。



自由詩 堕天 Copyright 46U 2021-11-15 22:50:01
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