It's absolutely impossible.
ホロウ・シカエルボク


血液が凝固したとき、その形状がなにかを語っていたとすれば、それが俺のうたうべきことなのだろうと思う、語るべき真実のないやつらは、静寂の中で気が狂う、瞬きの途中で騒乱を目にする、類稀なる血飛沫は讃美歌を奏でていた、闘いの…闘いの感触は常にその肌にあるべきだ、背中を丸めて詩情のにおいを嗅ぐ、それはいつだって腐敗臭によく似ている、膿んだ臓腑を抱えて、美しいうたをうたうことなど無意味だ、その理由は、俺でなくとも語るべき誰かが居るはずだ―蛍光灯の不自然なほど白い発光の残像の中で、コンタクトは成立していた、盤石の体制…人生など虚しくて当り前のものだと、目玉の確かなやつらなら必ず気付いている、だから、愚かな魂は日常の影でほくそ笑む、無軌道な循環を繰り返していた、訝り、苛立ち、昂ぶりながら―俺の影は殴打しがいがある、嘘は真実よりも本物みたいな形をしている、飲み込むな、喉を塞がれるぞ…例えば現実から切り離された瞬間の太陽のぎらつき、例えば極限まで乾いた身体に冷たい水を流し込んだ瞬間の蠢き、求めていたのはいつだってそんな胎動だったはずさ、目を閉じたまま生きる日々の中で、口を閉ざしたまま生きる日々の中で…屠り飲み込んできたものたちが連なった形状、叫び、綴り続けた時間がディスプレイやノートブックに刻み込んだ幾つもの傷―痛みだろう、確かに痛みだろう、だけどその種類は、陰鬱な明日よりもきっと確かなものの筈だ、安穏とした毎日の中で掴むものなどたかが知れている、ぼんやりとしているとすべてが弛んでしまうぜ、好きものの目をして混沌の中に潜り込み、蹲り、怯え、抗いながら、遺伝子に組み込まれる新しい構成には沸騰の感触がある、そこには、他のどんなものにも代えがたい快楽がある、知るための痛みにはそんなものが隠れている、求めるものは初めからそこにあった、だから俺は他のものには目もくれなかった、利口さや利便さを人生に求めなかった、人生なんて虚しくて当り前のものなのさ、だから、その中ですべてを享受したところでなにも得られはしないんだ―一見、殺風景な無遠慮な通りでも、歩いていれば必ず道標は目に入るものさ、もしもいまの俺に誇れるものがあるとしたら、それを決して見落とすことはしなかったということぐらいだ、結論を求めることはしない、それは俺の世が終わるときに初めて目にするものだ、欲しいのはいつだってプロセスだけなのさ、結果をどれだけ積み上げてみたところで、そんなもの明日にはまるで意味の無いオブジェにしか見えないとしたものだ、無限コンティニューのゲームみたいなものさ、下りたいと思えば電源を落とすしかない、眩暈がするほど続くゲームみたいな…自分で選択したもの、実行したもの、それは、おそらく死ぬまでついて回るだろう、そしておそらくその後の選択のすべては、最初の選択を遂行し続けるために必要なものばかりになるだろう、分かるだろう、結果に意味を求めようとするからみんな間違えるのさ、エンディングを求めてしまえばコントローラーを床に置くくらいしか後はすることがない、もっとも、そんな人生を生きているやつも腐るほど居るけどね、そんなこと俺には関係のない話なのさ、自分がどこにも居ないことを恐れるな、それはまだ続いている証だ、その手になにもないことを恥じるな、それはまだ手にすることが出来る証だ、混沌の中に蹲って新しい連なりを見つけたとき、そんな言葉はいまよりももっと、確かな意味を持ってくるはずさ、なにを選んで、なにを選ばなかったのか、その理由は、そうだと気づくことがなくても一生続いていくのさ、選んだものの為に生きなければ、人生は本当に嘘になってしまう、本当に怖ろしい影からは目を逸らしてはならない、眼前に現れるものには必ず意味がある、目を逸らさずに見つめ続けることだ、余計なことを考える必要はない、歩いていれば道標は必ず見つけることが出来る、怖れのほとんどは未知だ、本当に怖ろしいことはそれを知らないまま終わることの筈だろ、命の続く限り、正解を持たず、知り続け、挑み続け、惑わされず、諦めず、落ち着かず、思いつく限りの手段を試して、瞬間瞬間に微かな擦り傷を残していくことだ、人生なんて虚しくて当り前のものだ、幾つになっても、どんなものを手にしても、幸福でも不幸でもそれは変わることはない、それを幸せだと感じられるのは阿呆だけだ、いつか魂に還るとき、本当の叫びがそこに残るように、いつだってもう一度始めよう、そしてもしもお前の鼓膜がその振動を感じた時には、お前は同じ声を上げてそれに答えておくれ、生きている意味など求める必要はない、それはもうすでに進み始めているのだから。


自由詩 It's absolutely impossible. Copyright ホロウ・シカエルボク 2021-11-07 21:21:48
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