生臭い風が吹いてくる
あらい

透明なミドリは 光を吸い込んだ、廃墟に微睡んでいる。
まっさらだった背中に 弦を引く
ひとつひとつの潮騒が、舞い降りていくように
やわらかで まっすぐに。
掌中の虫の音を褥に、あらいざらい
山門をひとつひとつ、縫うように、刻んで
野花を口に含んで、銀の煌めきを夢に抱きながら、
弧を描きながら。
嗄れた声を放つ、廃線をただ、奔らせる眼差しの
壊れた幸せは熱を帯びたままで、誘蛾灯に群がる
何処まで行っても、お池の周りを、ぐるぐる して
にごりをおとしたもの、白皙をつくったものは
華やかな尾鰭がまた、まぎれもなく
僕と君との境にあり
解けたままで、浮いているのを覗き見て
『くるしくないの』と無彩色の君は、目を細めて、言う


自由詩 生臭い風が吹いてくる Copyright あらい 2021-11-07 13:10:37
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