前夜
紋甲メリー
手くらがりから詩片は
あふれる
ひと群れの鳩が雲に飲まれる
(わたしが眠っている隣で)
晴れた記憶野にからしの種を蒔く
轍のぬかるみに空が映っている
いきものたちはみな早起きで
時折あわてたように小さな糞をする
ここへはひとりで来たのか
それとも別のだれかと
透ける木立 あどけない春の地勢が
押し戻されてゆく夜のさなかに
さよならとだけ最後に
告げてくれればよかった
産み落とされたかなしみが不意に
働くわたしの手首を掴む
自由詩
前夜
Copyright
紋甲メリー
2021-11-05 03:32:35