会うために
竹節一二三

20時半発の夜行バス
わたしは財布片手に飛び乗った
12時間かけて向かう先は東京
海山川を越えて
わたしは東京に向かう
ただ埴輪に逢うために

前の席に坐ったサラリーマンのいびきに
仕事の苦労を思いながらわたしは埴輪を夢に見る

8時半に東京駅について
お手洗いで顔を洗い歯を磨く
そして身支度をして
上野に向かう
博物館が開くまでの何時間かは散策のために 当てる
ただ 埴輪に逢うために

3時間を歩き続けて
ようやく出会えた埴輪は
予想通りに茶色だった
教科書でみたよりもずっと大きく
わたしを見つめ返してきた
土に埋められていた跡など微塵もない
彼女は現代に生きる埴輪

埴輪と見詰め合う娘は気持ち悪いだろうと
口の端をあげるがおそらくその方が気持ち悪い
補聴器をはずしてしずかななかで埴輪と二人になる
また来たよ か
また来るね か
言いたい言葉は埴輪の時に吸い込まれていった

ただ 埴輪に会うために
12時間をバスに揺られて
海山川を越えて
3時間を歩いて
東京に行った

ただ 埴輪に会うために


自由詩 会うために Copyright 竹節一二三 2003-11-25 18:49:23
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