だれもかれも食べている
凍湖(とおこ)

生きているかぎり
食べない人はいない
だれもかれも食べている

そのありようは
そのままその人の日々を反映して

丁寧に手をかけた一汁三菜も
インスタントに湯であたためたものも
凍えた手に渡されたおにぎりも

器物もさまざまで
作家物の陶器もあれば
メラミン樹脂の割れない器
紙皿に割り箸

なかには、ボトルを高くにつり上げて、そこから一滴一滴
おなかに直接、一時間かけて甘やかな液体を落とす
上体を起こしてベッドに寄りかかり
お気に入りの音楽を流しながら
最後の一滴が終わるのを待ち

食べている
それは時間
たしかに存在しているその人の

お米を炊き上げる
白くふんわりとした湯気
そのあたたかな質量に
急に喉元にせり上がるものがあり
口をおさえて、しばしじっとする
そんなこともありながら
食べる


自由詩 だれもかれも食べている Copyright 凍湖(とおこ) 2021-11-02 14:41:49
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