北方派五分楽団
板谷みきょう
二軍を入れると二十数名になる
障碍者者を中心にした「北方派五分楽団」は
舞台に立ってパフォーマンスをするには
舞台会場にまで来ることが出来ること
月一回の練習には必ず参加することを
義務付けていた
だから
舞台に出れる一軍は
いつも十名程度になるのだった
ライブ会場に行くことが難しい団員は
公共交通機関を利用できる団員と協力しあい
駅前のコンビニやファーストフード店を
待ち合わせ場所にして団体行動を取って
出掛けるようにしていた
出来ることをお互いに助け合い
判らない時には周囲の人に
助けて貰いながら
自分たちですることの大切さを
知って貰いたいからだ
出演に際しては
交通費の他に楽団員一人々々の
弁当と飲み物をお願いし
出演交渉をした
地方のイベントに
早朝列車を利用して行く六名は
ダウン症の二名と
身体障碍者一名と
知的障碍者三名とだった
携帯電話を持っている団員と
連絡を取りながらのある時のこと
列車に乗ってから
判らないことがあったらしく
車掌に尋ねた処
「職員は同行してないのか。」と
詰問され返答に困ってると
電話がかかって来た。
何度目かの食い違いの
遣り取りの後、車掌曰く
「何かあった時は、誰が責任を取るんですか。」
『ワタシが取りますが…。』
その時のボクは
地方の会場に現地入りしており
列車内で何かトラブルが起きても
対応する術がないにも関わらず
暫しの沈黙の後
「それならいいですが。」
そうして電話は切れた
車掌の事務的で非現実的な
責任の所在の求め方に
愕然としたが
楽団員は何事もなく無事に
現地の駅に到着し
駅前で待っていたボクに
嬉しそうに手を振るのだった
※北方派五分楽団の地方演奏
https://www.youtube.com/watch?v=Fh-hha1C4gw