葉leaf

うたびとの記憶は木の葉のように、それぞれの滑面を散らしながらはすに重なりあってはひめやかに燃えていくのです。残り火は隔たりをときはなって、思い思いの灰を降らせながら真空にうずもれてゆきます。灰は年老いた花のように、朝へと遠ざかる時間の渕へとひとひらの祈りを落とします。そして己の内側に、繊月が草のように結露するのを土とともに待つのです……。結実……。年若い繊月に映し出された黎明の日々を、うたびとは味わいかえし、どもり続ける心のしぐさをひとつの方位へとけずってゆきます。そして彼の瞳にはまぼろしが滴下され、彼の口からは古びた城が立ちのぼってゆくのです……。

         *

光は錆び付いた剣のように
  にぶく   潅木の質量を切りきざむ
反射をやめ斜行する
    一羽の鳥のひからびた欲望が
          陰翳をおかし続ける
    終焉をつげる羽音はやまず
うまれかわる鉄塔のなかごろに
  青銅色の叫びが    こもる
 火  であることをあきらめた
      硬葉の上半部に
  情感めいた 炎 の反照が落ちてくる
        (世界は絶対的に反転し
                収縮する
その速度だけを感じて 
ムカデは節足の下に
    はじけ散る力を見た
       (くぼみに水は集まり
        ドクダミの影を映している
   気流の十指にあらがいながら
ドクダミは 炎 を包んでいる
 もえくさは 罪の記憶に羞恥の記憶
かぼそい茎はめまぐるしく装いを変えて
        (赤 金 紫 まだら模様 
   踊 り 続 け る
        (時間からも見放されて
         花はふるえる
こげついた穴から
     ツバキの葉をぬらす液体火
         炎      燃え移り
はかなく揺れる波となる幹は         
     やさしい歌と孤独の叫びを
               焚き続ける  
そして 炎 は空の裾野へと着床し
太陽と雲とをのみこんで

空は百年燃えた
人の心を焼き尽くすまで



自由詩Copyright 葉leaf 2005-04-27 19:45:22
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